2025年、アルケア株式会社は創業70周年を迎え、国産初のストーマ装具〈ラパック〉発売から60周年を迎えます。
今回はアルケアのオストミーケア事業60周年を記念して、日本のストーマ装具の発展の歴史をお伝えします。
1950's ストーマ装具が存在しない時代のストーマケア
海外では1954年に粘着式ストーマ装具が開発されましたが、日本国内には専用のストーマ装具はありませんでした。お椀やガーゼ、オムツなどを当てたり、防臭性のないビニール袋をベルトで固定したりするなどの方法がとられていたため、排泄物の漏れや皮膚障害、におい漏れが頻発していました。

ストーマ装具の代用品
1960's 国産初のストーマ装具誕生のきっかけ
1964年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター中央病院)の看護婦長(当時)今村勢子さんから、東京衛材研究所(現・アルケア株式会社)に国産の粘着式装具の開発要望があり、試行錯誤の末、1965年8月に国産初の粘着式ストーマ装具〈ラパック〉が発売されました。粘着剤とビニール袋を組み合わせただけのシンプルな構造でしたが、排泄物の漏れやにおい漏れが軽減できる、当時としては画期的な装具でした。

1965年発売 国産初の粘着式ストーマ装具〈ラパック〉
日本のストーマ装具の今昔物語については以下のブログでもご紹介しています。
〈ラパック〉のご紹介
日本のストーマケア用品 今昔物語 国産初のストーマ装具①
ブログはこちらから
〈ラパック〉が開発された経緯
日本のストーマケア用品 今昔物語 国産初のストーマ装具②
ブログはこちらから
1970's
1974年、粘着剤による皮膚障害の問題に対し、国産初の皮膚保護剤が開発されます。
1979年には国産初の皮膚保護剤付きストーマ装具〈ポスパック〉が発売されました。
1990's 肌着感覚で交換できるストーマ装具の開発
皮膚保護剤開発が進み、3~5日間使用できる耐久性の高い装具が発売されます。しかし短期間で新しい装具に交換したいと思うオストメイトにとって、短期間で交換するには粘着力が強く、剥離刺激で皮膚を傷める原因になっていました。
そこで1日や2日で剥離可能な〈ユーケアーシリーズ〉が発売されました(1998年)。ユーケアーはお風呂が好きで清潔を好む日本のオストメイトから大変喜ばれました。ラインアップ追加や改良を加えながら、現在もロングセラー商品として多くの方に愛用されています。

写真は〈ユーケアー・TD〉です

短期間で剥離可能な皮膚保護剤をつくるため、配合と薄さにこだわりました。短冊状に切った皮膚保護剤の試作品を自分のお腹に何枚も貼って、剥離の力や剥離後の皮膚を評価するテストを繰り返しました。その後、研究所に泊まり込み、数時間ごとに起きて剥離評価をしたのが、一番苦労した思い出ですね(笑)。自分たちのお腹で試した後、ようやくオストメイトの方に試していただいて発売することができました。
2000's イレオストミー用ストーマ装具の開発
1990年代末、手術手技の進歩により肛門温存手術と一時的イレオストミーの造設が増え始めました。当時、アルカリ性の水様便が排泄されるイレオストミーに適した装具がなく、看護師やオストメイトは水様便のケアに難渋していました。
そこで、イレオストミーの排泄物性状を研究し、皮膚保護剤だけではなく面板、袋、排出口の形までイレオストミー専用に設計された〈イレファインシリーズ〉が発売されました(2001年)。

写真は〈イレファイン・Dキャップ〉です

当時はイレオストミーの方が少なかったため、どんな排泄物が出てくるのかという研究からスタートしました。便の特性を再現した擬似便の試作品を作製しては病院で評価してもらうことを繰り返し、ようやく擬似便が完成しました。しかし、ここからが本番で、共同研究先の大学と皮膚保護剤の研究を進めながら、擬似便を活用して袋の設計を行いました。発売前の試作の段階でオストメイトの方に大変喜んでいただけたことが、とてもうれしかったです。
2010's 皮膚保護剤の矛盾を解消するストーマ装具の開発
それまでの皮膚保護剤には、吸水すると溶け崩れてしまうという一般的な特性がありました。また、数日ごとに貼り替える皮膚保護剤は、貼付中は皮膚に排泄物や分泌物が直接触れるのを防ぎますが、装具交換で剥がすときには皮膚に刺激を与えてしまうという矛盾を抱えています。そこで、剥がすときの刺激や糊残りの低減、吸水後も溶け崩れにくい配合を検討し、世界で初めてセラミド※を配合したストーマ装具〈セルケアシリーズ〉が発売されました(2008年)。
※セラミドは吸水補助の目的で配合しています。

写真は〈セルケア1・TD〉です

短冊状にカットした皮膚保護剤の試作品をお腹に複数枚貼り、数日後に剥がすというテストを、約2年の間繰り返しました。貼付テストに休みはなく、私は新婚旅行先のビーチでも複数枚の試作品をお腹に貼っていました(笑)。テストの度に配合を調整していった結果、試作した配合パターンは100パターンを超えました。オストメイトや看護師の皆さんのご意見を聞きながら、その中から厳選したのが、今のセルケアの皮膚保護剤です。
~現在 さらなるオストメイトのQOL向上を目指して
最近では、オストメイトの方が自分らしい毎日を過ごせるように、ケアや生活をサポートするさまざまなアクセサリーが充実してきています。
![[写真左]やわらかウエストチューブ [写真右]やわらかウエストショーツ](/stoma-life/images/h11-featurel-09.jpg)
オストメイト専用の肌着
[写真左]やわらかウエストチューブ(2020年発売)
[写真右]やわらかウエストショーツ(2021年発売)
![[写真左]バスラックシール [写真右]デイリーデオワイプ](/stoma-life/images/h11-featurel-10.jpg)
[写真左]装具を目立たせない入浴用シール バスラックシール(2023年発売)
[写真右]排出口の拭き取りができるシート デイリーデオワイプ(2024年発売)
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(土・日・祝日を除く午前9:00~午後5:30)
(2025年9月発行)
