肌着を着用することのメリットとは
冬場には寒さから体を守る保温効果、夏場には汗を吸いとる吸水効果があります。また、衣類の接触による肌への刺激を避ける効果など、肌着の役目は一つではありません。肌の状態は人によって違いますが、直接肌に触れる肌着が果たす役割は大きいと思います。
夏場は肌着を着用しない方もいらっしゃいますが、発汗量の増える時期は特に肌着を着用したほうが良いと言えます。汗は体温調節のために欠かせないものですが、余分な汗が皮膚に残った状態が長時間続くと、皮膚表面の角質層がふやけて壊れやすくなったり、かゆみにつながる皮膚トラブルが発生しやすくなると言われています。特に夏場は汗の量も多くなりますから、肌着を身につけて肌に余分な汗を残さないことが大切です。
肌着に使用されている素材について
適切な肌着選びでは、素材だけでなく〈刺激や摩擦の少なさ〉も重要だと考えています。
たとえば、綿には天然素材、汗を吸いやすい、静電気が起きにくいなどの特徴があり、日本では綿100%の生地が好まれる傾向にあります。しかし、綿100%の生地は洗濯を繰り返すと硬くなったり毛羽立ったりしやすいため、肌に刺激を与えてしまう場合もあります。
また、化学繊維は肌に良くないというイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。綿と同じように汗をよく吸う素材も多くあります。
自分に合った肌着を選ぶためのポイント
肌への刺激や摩擦を減らすために重要なポイントは、「生地の表面がなめらか」で「体にフィットする」肌着を選ぶことです。
ポイント1 生地の表面がなめらかであること
生地に凹凸があると肌に擦れるときに刺激になります。肌に当たる面に縫い目やタグのない、なめらかで肌ざわりの良い生地を選びましょう。
ポイント 2 体にフィットしていること
大きめの肌着はゆったりして一見肌ざわりが良いように思いますが、実際にはだぶついて肌との摩擦が起きてしまいます。
腹部外科手術をされた方(20〜60歳代の女性200名)を対象としたインターネット調査※で一番多かったお悩みが「傷あとが擦れて痛む」でした。そして、「術後に購入した肌着は?」と聞いたところ、大きめのサイズを選んだ方が65%に及びました。やはり肌着は体にフィットしたものを選ぶことが大事なのです。
※【調査期間】2020年7月 【調査機関】ネオマーケティング社調べ 【調査対象】腹部外科手術をされた20~60歳代の女性200名
肌着に関しては、感じ方にかなり個人差があります。たとえば、同じサイズの肌着を着ていただいたときでも、お腹周りの大きい方が「ちょうど良い」と言い、お腹周りの小さい方が「きつい」と言ったことがありました。表記されているサイズはあくまでも目安なので、着用したときのフィット感などは個々の価値観や好みで選んでもらえたらと思います。ただし、大きすぎる肌着を着ると肌との摩擦が起きやすいので注意してください。
肌着の買い替え時期の目安とお手入れ方法
肌着は洗濯回数がだいたい50回を超えると、繊維が劣化して汗を吸いにくくなってきます。見た目にはわかりづらく、汗の吸収力が落ちたことも実感しにくいのですが、特に綿素材は洗濯を重ねていくと汗を吸わなくなります。繰り返しになりますが、汗が肌に残ると皮膚トラブルの原因にもなります。そのため、洗濯回数が50回から多くても100回以内を目安に買い替えていただくことをおすすめしています。
その他、肌着の生地を傷めないために洗濯ネットに入れて洗うことも大事です。また、繊維製品は同じものを続けて着るよりも、数枚をローテーションしながら着るのが長持ちさせるコツです。
オストメイトにおすすめの肌着とは?
先ほどお伝えしたように、おすすめの肌着は、生地の表面がなめらかで肌ざわりが良く、体にフィットしたものです。身につける肌着に少し気を遣うだけで、生活の質が変わってくると思います。
オストメイトの方には「ベルトをすると肌に当たって痛い」「活動しているとストーマ装具が動いてしまう」といったさまざまなお悩みがあると思います。こうしたオストメイトの方のお悩みを解決したいという思いから、アルケア社と協働でオストメイト用の肌着を開発しました。まずは、肌への刺激や摩擦を軽減するために、凹凸のないなめらかな生地の表面と体を包み込むようなやさしいフィット感にこだわりました。その上で、オストメイトの方の場合、ストーマ袋を通すために切れ目を入れる必要があるので、切ってもほつれにくい生地を採用しました。
普段ご利用者様から直接ご感想を聞く機会はあまり多くないので、実際に肌着を着用したオストメイトの方から感謝のメールをいただいたときは、本当に嬉しく思いました。この仕事を通して実際に使用した方からの生の声を聞くことで、私たちのほうが励まされ元気をもらっています。これからもオストメイトの方々にお話を伺いながらお悩みを解決し、安心して着用していただける商品をお届けしたいです。
(発行:2023年3月)