ダメージを受けやすい
高齢者の皮膚のスキンケア
監修 ひふのクリニック人形町 院長
東京慈恵会医科大学客員教授 上出良一
気になりませんか?
皮膚のこんな症状
その皮膚はバリア機能が
低下しているかもしれません。
バリア機能とは
バリア機能とは皮膚表面の角層がもつ働きで、次の2つの機能のことをいいます。
- ●アレルゲン*や微生物などの異物の侵入を防ぐ機能
- ●体内の水分の蒸発を防ぐ機能
皮脂膜、角層細胞間脂質、天然保湿因子(NMF)の3つが、角層のバリア機能を維持しています。
正常な皮膚は外的刺激の影響を受けにくく、水分を保った健康な状態であるのに対し、バリア機能が低下した皮膚は角層が傷んで水分が外へ逃げ出すため乾燥し、アレルゲン*や微生物などが侵入しやすい状態になっています。
*アレルゲン:アレルギーを引き起こす原因となるもの。花粉、ダニの死骸、ホルムアルデヒドなど、数多くの種類がある。
バリア機能の低下はなぜ起こるの?
バリア機能低下の要因はさまざまですが、高齢の方、治療や処置等で皮膚への負担が多い方はとくに、次のような影響を受けやすくなります。
角層の脂質の減少
角層の保湿成分である脂質が減少するとバリア機能が低下し、皮膚が乾燥します。脂質の量は加齢とともに減少します。
TG(皮脂腺由来のトリグリセリド)、FA(角層細胞間脂質の脂肪酸)、TC(セラミド)は保湿成分である脂質です。これらすべてが高齢者群では減少していることがわかります。
ストーマ装具やテープ等の粘着材の連続貼付・剥離
粘着材を剥がすときの刺激などで皮膚表面の角質が弱くなったり剥がれることもあるため、バリア機能が低下します。
色の濃く見える部分が、剥がれた角質です。広い面積で角質が剥がれていることがわかります。
バリア機能を低下させる要因は他にも次のようなものがあり、大きく2種類に分けられます。
- 外的要因
- 紫外線、温度・湿度の変化、摩擦・ずれ・圧迫による刺激、排泄物などの刺激、皮脂などの汚れ、空気中のほこり・ゴミ、化学物質、石鹸・洗剤
- 内的要因
- 病気などによる免疫力の低下、加齢による新陳代謝の低下、生活リズムの乱れ、ストレス
バリア機能が低下して乾燥すると、
皮膚は外的刺激の影響を受けやすくなり、
皮膚トラブルが起こりやすくなります。