ニュースリリース
2024年6月20日
日本医療研究開発機構(AMED)事業に、アルケアと国立成育医療研究センターの検証研究が採択
皮膚への電流の流れやすさを計測する方法を用いた、簡易で低負荷にスキンバリア機能を測定する医療機器開発を目指す
アルケア株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:伊藤 克己、以下「アルケア」)は、2020年から国立成育医療研究センターアレルギーセンターの山本 貴和子診療部長らとともに、皮膚の角層の水分量および角層の厚みの簡易測定を目的とした皮膚測定機器の検討として小児健常者および小児アトピー性皮膚炎患者での予察等の共同研究を進めています。
この度、「新生児からのインピーダンス法を用いた非侵襲性簡易スキンバリア機能医療機器開発の検証研究」(以下、本研究)が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募した令和6年度「医療機器開発推進研究事業」の小児用医療機器の実用化を目指す医師主導治験・臨床研究に採択されました。本研究を推進することで、臨床現場において、アトピー性皮膚炎の診断根拠の構築や皮膚疾患の発生リスクを見極め、アトピー発症の可能性のある新生児を抽出します。また、発症した場合にも、アトピー性皮膚炎の標準治療であるステロイド外用薬による副作用を予測することで、治療のリスク管理を実現することを目指します。
採択された研究課題開発
研究開発課題:新生児からのインピーダンス法を用いた非侵襲性簡易スキンバリア機能医療機器開発の検証研究
同 実 施 期 間:2024年4月1日 ~ 2026年3月31日(予定)
同 代 表 者 :山本 貴和子先生(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 診療部長)
本研究の目的
1.新生児のアトピー発症のリスク可能性の見極め(皮膚バリア機能の異常を検知)
2.ステロイド剤によるアトピー治療のリスク管理(ステロイドの副作用による皮膚バリア機能の乱れを見極める)
3.アルケアが開発した皮膚測定機器「ポータブル非侵襲皮膚インピーダンス測定装置(以下、皮膚測定機器)」にて上記1・2を検証
し、検証結果数値を蓄積してリスク管理の基準値を策定
本研究の背景と経緯
(1)日本におけるアレルギー疾患とそれを取り巻く環境
厚生労働省が発表しているように、日本ではアレルギー疾患を有する方の増加が見られており、現在は乳幼児から高齢者まで国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有していると言われています。アレルギー疾患には気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎・結膜炎、花粉症等がありますが、症状の悪化や軽快を繰り返し、時には休園や休学、休職等を余儀なくされ、生活の質を著しく損なうことがあります。また、アナフィラキシーショックなど、命に関わる症状が出現することもあります。医療の進歩に伴い、科学的知見に基づいた医療の提供によって症状のコントロールができるようになってきていますが、全ての患者さんがその恩恵を受けているわけではないという現状も指摘されていることから、適切な診療・管理のさらなる普及が望まれています。このような社会的課題を背景に、日本におけるアレルギー疾患医療の状況を改善し、アレルギー疾患対策の一層の充実を図るために平成27年に「アレルギー疾患対策基本法」が施行されました。
(2)アレルギー疾患に関する課題を解決するためのアプローチ
アルケアは、岡山大学の中村 隆夫教授との共同研究により、2022年に皮膚からの水分蒸発量を推定できる新たな計算モデルを確立し、この計算モデルを搭載した皮膚バリア機能を瞬時に測定する皮膚測定機器(試作機)を開発しました。臨床現場での皮膚バリア機能を評価する機器のニーズは高く、これまでも経表皮水分蒸散量計など皮膚バリア機能を測定する機器はありましたが、計測に拘束時間を30分程度要することや大掛かりで高価であることから、現場での採用が進んでいませんでした。開発段階である皮膚測定機器を医療機器として実用化し、既存の皮膚バリア機能を評価する機器の課題を解決し、臨床現場に貢献するための研究を推進しています。
アルケアは、国立成育医療研究センターと取り組む本研究を通じて、喘息や食物アレルギーの起因と言われているアトピー性皮膚炎の発症の予兆を掴むこと、発症した場合においても、標準治療であるステロイド外用薬による副作用を予防することでアトピー治療のリスク管理を実現することを目指します。また、開発段階の皮膚測定機器を医療機器として実用化することで、アトピー性皮膚炎についての発症予防と治療のリスク管理が医療機関で展開されることを推進します。
アルケアのスキンケア領域では、1973年にストーマ用品の皮膚保護剤※を国内で初めて開発販売したことを起点に、現在は、ダメージを受けやすい脆弱な皮膚のためのスキンケアブランドなど、ラインアップを拡充しています。また、医療の専門領域で培ってきた基盤をもとに、皮膚領域において研究を重ねエビデンスを構築し、新たな価値を創造・提供することでケアを受ける患者さんご本人とご家族、ケアをする医療従事者の方々など、誰もが適切なスキンケアが行える製品やツールの提供を通じて、皮膚トラブルを未然に防ぎ、皮膚を健康な状態に戻し、保っていただきたいと願っております。今後も、皮膚測定機器や皮膚状態の評価ツールなどの研究開発・確立や、スキンケアの製品開発、普及・啓発活動に努めてまいります。
研究者からのコメント
アルケア株式会社 価値創造部 上原 治
長年、岡山大学との共同研究で皮膚測定の試作機を開発してきましたが、このたび国立成育医療研究センターとの共同研究で実用化に向けて新規策定したコンセプトが認められ、非常にうれしく思います。今後は、AMED事業の支援のもと、新生児から皮膚バリア機能を適切に評価できる医療機器として実用化できるように尽力してまいります。
研究代表者 山本 貴和子先生(国立成育医療研究センター)
新生児から皮膚バリア機能を適切に評価できる医療機器が実用化されると、お子さんごとのお肌の状態に合わせて、個別化した予防や治療ができるようになると考えています。日常診療で活用できるようになると、アトピー性皮膚炎の予防法や治療法が大きく変わるのではないかと期待しています。
アルケア株式会社について
1953年に国産初の石膏ギプス包帯「スピードギプス」の開発・製造に成功し、1955年に創業しました。ケアをする人・ケアを受ける人の双方にとって「親切な製品をつくる」という創業当時の想いはそのままに、現在は予防から社会復帰にいたるまで、ケアをプロセス視点で捉え、整形外科領域、褥瘡・創傷領域、ストーマ領域、看護領域の4つの専門領域で事業を展開しています。「ケアすることの可能性をもっと豊かに。ケアを受けることをもっと前向きに。」アルケアは、そんな明日の形を見据えて、磨きぬいた製品や情報、サービスを社会の隅々にまで広げてゆきます。
国立成育医療研究センターについて
病院と研究所が一体となり、胎児にはじまり、新生児、乳児、幼児、学童、思春期、大人へと成長・発達し、次の世代を育む過程を、総合的かつ継続的に診る医療と研究=「成育医療」を行っています。病院は、日本で最大規模の小児・周産期・産科・母性医療を専門としています(病床数:490 床、外来(一日平均)約 1000 名)。また、病因・病態の解明や克服のための研究を行うとともに、健全な次世代を育むための社会の在り方について提言しています。