ストーマなんでも相談室

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ストーマ周囲の皮膚の観察ポイント

なぜ排泄物の漏れが起こるのですか?

排泄物の漏れにはさまざまな原因があり、複数の原因が重なり合って生じている場合もあります。たとえば、ストーマ周囲の皮膚にしわやくぼみがあると、面板と皮膚がしっかり密着しづらくなり、漏れが発生しやすくなります。また、ストーマの高さ(皮膚から排泄口までの高さ:図1)がないと皮膚と面板の間に便がもぐり込みやすくなります。

皮膚から排泄口までの高さ
図1:ストーマの高さ

他にも、ストーマ装具を交換する頻度が適切でないと漏れが生じやすくなります。自分の使っている装具が何日間貼ることができるものなのかを把握しておき、適切な日数で交換してください。

気をつけていただきたいのは、面板の外に漏れていなくても、面板の裏側を見たときに排泄物がもぐり込んでいれば、それも漏れている状態だということです。排泄物の漏れが続く場合は、病院のストーマ外来を受診しましょう。

ストーマ周囲の皮膚を観察するとき、注目すべきポイントを教えてください。

大切なのは、いつもと違う点に気がつくことです。そのために、定期的にストーマと向き合う時間をつくりましょう。おすすめしたいのは、ストーマ装具交換時、装具をはがしながら面板の裏側を見ることです。一定期間貼付した面板は、汗や排泄物の水分を吸収して溶けたり(溶解)、膨らんだり(膨潤)しています。

コロストミーの場合、面板の孔から10㎜くらい溶解・膨潤していたら、ちょうど良い交換時期です。イレオストミーやウロストミーの場合は、面板の孔から5〜10㎜くらい溶解・膨潤していたら、ちょうど良い交換時期です。また、ストーマ周囲の皮膚を鏡に映して、面板の裏側の状態と皮膚の状態を見比べてみるのも良いでしょう。

最初のうちはケアを手順通りに行っていても、慣れてくると自己流になってしまう方も少なくありません。ストーマケアを行う際、自分が丁寧にやさしくできているかも確認してみてください。

排泄物を処理するときに、確認したほうが良いことはありますか?

排泄物の性状と量をチェックすることが大切です。消化管ストーマ(コロストミー・イレオストミー)の方は便の性状がゆるく水っぽくなったり量が増えたりしていないか、尿路ストーマ(ウロストミー)の方は尿の色が変わったり量が変化したりしていないかなどを確認しましょう。

便や尿の量が少ないときは水分が足りていない可能性があるので、水分制限を指示されていない限りは十分な水分摂取を心がけましょう。

日常のストーマケアの中で見落としがちなことはありますか?

びらんになると痛みを感じて病院に相談される方が多いのですが、その手前の発赤(皮膚が赤くなること)の段階から気をつけていただきたいです。はじめは発赤であっても、そのままにしておくとびらんや潰瘍になる場合があります。

また、ストーマ装具をはがした直後は剥離刺激で多少皮膚が赤くなることもありますが、皮膚を洗い終わって面板を貼るときになってもまだ赤みがある場合には注意が必要です。真菌などに感染している可能性も考えられます。「いつものことだから大丈夫だろう」「排泄物がついているから仕方ない」などとそのままにせず、発赤が続く場合はストーマ外来などで診てもらいましょう。

ストーマ外来を受診する前に、どのようなことを準備しておくと良いですか?

ストーマの記録をつけておくと、いつ頃から変化が起きたのか知ることができ、受診するまでの経過を具体的に伝えられると思います。

おすすめしているのは、スマートフォンなどでストーマ周囲の皮膚や面板の裏側の写真を撮ることです。自分で撮るのが難しければ、家族などに撮ってもらいましょう。ストーマ外来で写真を見せることで、言葉で説明するよりも的確に伝えることができ、診断がスムーズにできる場合もあります。

ストーマ周囲の位置を説明する時の伝え方
※左側にストーマがある場合

ストーマ周囲の位置を説明する場合

電話などでストーマ周辺の部位を伝えるとき、「上下左右」だけでは伝わりにくいことがあります。左記のような言い方で説明すると理解してもらいやすいので、参考にしてください。

ストーマの記録ノートを作るのもおすすめです。記録をつけるときは、「いつ」「どのような状態だったか」をメモしておくと、後から振り返ることができます。ストーマ装具からの漏れ、面板の裏側の溶け具合、ストーマ周囲の皮膚のかゆみや赤み、ストーマからの出血、粘膜部分の異常などがあれば、書き留めておきましょう。また、受診するときは体重の増減も伝えると良いでしょう。体型の変化によりストーマ装具が合わなくなり、スキントラブルが起きているケースもあるからです。

気になることがあるときは、我慢せずにストーマ外来を受診しましょう。「こんなことを相談して良いのだろうか」などと思わずに、今困っていることを率直に伝えていただくと良いと思います。

ストーマに関する用語を正しく覚えましょう

ポイント
お腹の外に出ている腸や尿管を「ストーマ」と呼び、お腹に貼る装具のことを「ストーマ装具」と呼びます。

ストーマ

①ストーマ
お腹に造設した便や尿の排泄口。

②排泄口(はいせつこう/はいせつぐち)
排泄物が出てくる部分。

ストーマ装具をお腹に貼付している状態

③ストーマ装具
排泄物を受け止めて溜めるために、お腹に貼る袋状の装具。面板とストーマ袋で構成されています。

ストーマ装具のパーツごとの名称

④面板(めんいた)
お腹に貼る部分。

⑤ストーマ袋
排泄物を溜める袋。

⑥排出口(はいしゅつこう)
排泄物を排出する部分。

(発行:2023年3月)

執筆者の 皮膚・排泄ケア特定認定看護師の加瀬 昌子 先生

地方独立行政法人 総合病院 国保旭中央病院
皮膚・排泄ケア認定看護師/特定看護師
スキンケア相談室 看護師長

加瀬 昌子 先生

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