オストメイトインタビュー

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小出 宗昭 さん(60代/男性 ストーマ歴2年)

インタビュイーの小出宗昭さん

小出 宗昭 さん(60代/男性 ストーマ歴2年)

中小企業や起業、地域おこしなどを支援するビジネスコンサルタントとして活躍する小出さん。36歳で膀胱がんと診断され、再発を繰り返し、62歳のときに膀胱を全摘しストーマを造設しました。現在は仕事に完全復帰し、全国各地を飛び回っています。

ストーマを造設するまで:膀胱がんが見つかってから27年目の大きな選択

今から28年前、銀行員だった36歳のとき、職場のトイレで大量の血尿が出て検査を受けたところ腫瘍が見つかりました。内視鏡手術を受け、良性のポリープとばかり思っていたら、病理検査の結果は膀胱がんだったのです。それから再発を繰り返しましたが、その度に内視鏡手術をして、長年がんと付き合ってきました。

41歳のときから、地域の中小企業や起業を考えている人たちの相談にのるビジネスコンサルティングを行っています。36歳から現在まで20回以上の入退院を繰り返してきましたが、待っている相談者様のためにも必ず復帰しなければならないという想いでモチベーションを保ってきました。主治医には自分の仕事を理解してもらった上で治療方針を提案してもらい、徹底的に情報収集をして、納得のいく治療法を選択してきました。

2020年の夏、2〜3年ごとだった再発が半年おきになり、22年の夏にはがんが進行していることがわかりました。医師から提案された治療の選択肢は「膀胱を温存した薬物療法」と「膀胱を全摘する手術療法」の2つでした。また全摘の場合、開腹手術とロボットを使うダヴィンチ手術があり、さらに尿の出口であるストーマを造設する方法と、切除した小腸を使って代用膀胱をつくり尿道につなぐ方法があるとのことでした。

医師からは、根治のためには全摘が標準治療であると言われました。ただし、膀胱全摘後も尿道から排出する代用膀胱の場合、残した尿道にがんが再発する可能性があるとも言われました。一刻も早く仕事に復帰したいこと、出張があり講演会では時間を拘束されること、がん再発のリスクがあることを考慮した結果、入院期間が短いダヴィンチ手術で、排尿はストーマで行なうことがベストだと判断しました。自宅からも近い総合病院で手術を受けることになり、術前の抗がん剤治療などの準備を始めました。

仕事復帰に向けて:ストーマを造設しても今までどおりのスーツ姿で

私の仕事着はスーツです。手術前に「ストーマ装具を貼付してもスーツは着られるのか」と心配になりましたが、調べてもどこにも書いてありません。

2回目の抗がん剤治療の入院中、皮膚・排泄ケア認定看護師さんとの面談があり、「スーツを着て仕事を続けるために準備をしておきたい」と話すと熱心に相談に乗ってくれました。スーツのメーカーに問い合わせると「そういう人は初めてです」と言われましたが、ウエストと脚回りを広げる補修をしてもらえました。次の抗がん剤治療にそのスーツを持って行くと、看護師さんがストーマの模型と水を入れた装具を私のお腹につけてくれて、ストーマ造設後の疑似体験をさせてくれました。

このような体験から、現在もストーマ外来を受診するときは、医療従事者に自分の状況や今後どういうふうに生活していきたいかという希望をはっきりと伝えることを大切にしています。

インタビュイーの小出宗昭さんが講演をしている様子

ストーマとの付き合い方:周囲に知ってもらうことで生きやすくなる

手術の翌日から妻に同席してもらい、看護師さんからストーマケアの指導を受けました。自宅でもしばらくは妻に手伝ってもらいましたが、出張先では自分自身でやるしかありません。仕事中に漏れに気づいて焦ったこともありますが、何度か経験するうちに漏れたときの対処法がわかるようになってきました。外出時は装具2セットと着替えをカバンに入れています(写真1)。カレンダーアプリには、「面板交換の日」と予定を入力しておいて装具交換の日を忘れないようにしています。

インタビュイーの小出宗昭さんが外出時に持ち歩いているストーマ装具と着替えのセット、それらを入れているカバン

(写真1)装具や着替えをセットで持ち歩いています

また、出張したときに泊まるホテルには、夜間用の蓄尿バッグをかけるところがありません。そこで、クリップボードをベッドのマットの下に差し込んで、クリップ部分に蓄尿バッグのベルト部分を引っかけています(写真2)。

インタビュイーの小出宗昭さんが工夫をしている、クリップボードをベッドのマットの下に差し込んで、クリップ部分に夜間用の蓄尿バックのベルト部分をひっかけている様子を横から見た状態と、正面から見た状態

(写真2)出張先のベッドではクリップボードと夜間用の蓄尿バッグで対処しています

私の場合、仕事関係の人には自分がオストメイトであることを伝えています。そのため行く先々でトイレの場所を案内してくれたり、トイレの時間を設けてくれたりすることが多く、安心感が得られています。人によって考え方は異なると思いますが、個人的にはストーマのことも他の病気のことも、自分の生きやすさにつながるなら周りの人に知ってもらうのは良いことだと思います。

メッセージ・思い:モチベーションを高くもってチャレンジし続けたい

私はがんになったことで本当にたくさんの経験をさせてもらいました。自分のような人生もなかなかないと思うので、この記事を読んだ方には「こんな人がいるなら自分だって大丈夫だ」とモチベーションアップにつなげてもらえたらうれしいです。

近年は病気の治療をしながら働く人が増えています。私は周りの支えもあり、第一線で仕事を続けてこられましたが、自分が強くこだわるものや生きる意味のようなものが明確にあると、モチベーションになると思っています。

私のところに相談に来られる中小企業の方々は人生をかけて仕事に取り組んでおり、私の仕事はその人たちと向き合って全力で応援し、ハッピーにするお手伝いをすることです。そして、成果が出て感謝の言葉をいただけることが自分のやりがいや喜びにつながっています。どんな状況であっても自分の生きがいを見出して前に進んでいきたいですし、これからも常にモチベーションを高くもってチャレンジし続けます。

(発行:2024年9月)

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