災害時に備えて何を準備しておけば良いですか?
最も大切なのは、普段使っているストーマ装具一式を準備しておくことです。
装具を交換するときに必要な物品をひとまとめにして、非常用持ち出し袋やリュックなど(図1)に入れておけば、緊急時すぐに持ち出すことができます。
・ストーマ周囲に使用するウェットティッシュは肌への刺激が少ないノンアルコールのものを。
・ビニール袋は避難所でのゴミ処理方法がわからないので中身の見えないものを。
・ストーマの情報を書いたメモは非常用持ち出し袋や障害者手帳などに入れておきましょう。
災害時は水が十分になく、水を使わずに装具交換を行わなければならない場合もあります。水を使わなくても清拭できるクリーム(リモイスクレンズなど)やウェットティッシュは必ず準備しておきましょう。ストーマ周囲などに使用するウェットティッシュは、必ず肌への刺激が少ないノンアルコールのものを使ってください。実際にケアを行うときには、皮膚トラブルを起こさないようにやさしく面板をはがし、リモイスクレンズなどの洗浄剤やノンアルコールのウェットティッシュを使って、排泄物や粘着剤・剥離液の残りをきれいに拭きとるようにしてください。
なお、非常用持ち出し袋は少なくとも1年に1回、できれば半年に1回程度確認し、期限が切れそうなものは交換しましょう。ストーマ装具の使用期限は比較的長いですが、古くなると面板の粘着力が弱くなるなど劣化してしまうので、非常食などと同様に定期的に入れ替えてください。防災の日(9月1日)や誕生日など、確認する日を決めておくと良いですね。
自分の使っている装具の商品名を覚えていない方もいるので、メーカー名、商品名、サイズ、購入している販売店などをメモしておくのも良いですね。そのメモは障害者手帳や保険証に挟んだり、非常用持ち出し袋の中に入れたりして複数個所に保管しておきましょう。また、使っている装具一式の写真をスマートフォンなどで撮影しておくのもおすすめです。自分でできない場合でも、お子さんやお孫さんなどに頼んで撮影してもらい、家族で共有しておけば安心です。
ストーマ装具は何日分くらい用意すれば良いですか?
さまざまな意見がありますが、ストーマ装具は10~14日分くらい準備しておくのが望ましいといえます。というのも、10~14日も経てば、何らかの支援が届くことが想定できるためです。
災害などで緊急避難をする場合、荷物は持ち運べる最小限の量にすることが基本です。飲料水や非常食、薬なども必要となるため、合わせて用意しておきましょう。
災害時はストーマ装具の交換頻度を減らしたほうが良いでしょうか?
基本的には、いつも通りと考えてください。避難所では装具交換の機会や環境が限られていますし、手持ちの装具が少ないことから、交換間隔を延ばそうと考える方もいらっしゃいますが、皮膚トラブルが起きてしまったら、さらに処置が必要となる可能性があります。そのため、平時より交換間隔を延ばすことはやめましょう。
そのほか災害に備えた事前の対策はありますか?
災害時には使用できる水が限られることが多いため、普段、洗腸※1 をしている方は、自然排便法を習得しておくと良いでしょう。指導を受けたい場合は、ストーマ外来に相談すると良いと思います。そして、自然排便用の装具も用意しておきます。洗腸は腸を刺激して排便を促すため、洗腸を行っている方が自然排便法に変更した場合、便秘になる可能性もあるので気をつけましょう。
※1 洗腸とは?
洗腸は、ストーマから腸管に一定量の微温湯を入れ、腸管にある便を微温湯とともに強制的に排出させる方法です。
洗腸はすべてのオストメイトが選べる方法ではありません。洗腸の実施は主治医と相談してください。
避難所で過ごすときに注意することはありますか?
着の身着のままで避難しなければならなかったような場合、落ち着いたら避難所の責任者や係員などにオストメイトであることを伝えましょう。慢性疾患で薬を服用している方なども、なるべく早めに相談してください。冷静になって、自分の状況を的確に伝えることが大切です。
避難所は乾燥していることも多いので、脱水症にならないよう注意が必要です。
トイレの回数を気にして水分量を減らすことはせず、適切な水分摂取を心がけてほしいと思います。高齢者の方は脱水の症状に気づきにくいので、周囲の人が声をかけて水分摂取を促すことが大切です。ペットボトルから直接飲めない方もいるので、誤嚥予防のためにも紙コップなどがあると良いですね。
避難所生活ではストレスや運動不足から、便秘になりやすくなります。便が長期間出ない場合は、水分を多めにとる、排便を促す薬を服用するなどの対策をとりましょう。普段から使用している便秘薬などがあれば、持っておくと安心です。
災害時にオストメイトへの支援があると聞きました。具体的な内容は?
ストーマ装具メーカー7社が参加しているストーマ用品セーフティーネット連絡会(OAS)による災害支援があります。
災害救助法が適用された地域で、ストーマ用品の入手が困難なオストメイトに対して、約1ヵ月間無料で装具が提供されるというものです。
支援が必要な場合、普段ストーマ用品を購入している販売店※2 に連絡してください。その販売店を通してストーマ用品の支援を受けることができます。(図2)
※2 販売店が被害を受け連絡が取れない場合、避難所の責任者や係員などに相談してください。
災害時だからこそ普段と同じ装具が使えると安心ですが、緊急時は普段と同じものが提供されない場合もあります。普段プレカットを使っている方も、フリーカットの装具を使えるようにハサミを持っておくと良いでしょう。ご本人がハサミを使えなくても、他の方に切ってもらうことができます。
(発行:2021年6月)