アルケア株式会社と近畿日本ツーリストが連携し、オストメイトを対象とした温泉と装具の工場を見学するツアーを開催しました。その模様をレポートいたします。
オストメイトを対象とした初めてのツアーとして企画
オストメイトの方の多くは、旅行を楽しみたくても「乗り物内でのにおい漏れが心配」「温泉に入りたいけれど、まわりの目が気になる」といった不安を抱えています。ストーマ装具は正しい装着法で使用していれば、中身やにおいが外に漏れる心配は全くありません。入浴のときは装具の上に肌色の防水シートを貼れば目立つこともないですが、「知らない人に驚かれたら」「不快な思いをさせたら」と躊躇する方が多いのです。
そこでアルケア社では近畿日本ツーリスト首都圏と連携し、オストメイトのための日帰り温泉ツアー「ストーマ装具工場見学と龍宮城スパホテル三日月温泉入浴体験会」を実施しました。近畿日本ツーリスト首都圏をグループ企業のひとつとするKNT-CTホールディングスは、20年以上前から「ユニバーサルツーリズム」の推進に取り組んできたことで知られます。「ユニバーサルツーリズム」とは年齢差やハンディキャップの有無に関わらず、誰もが気兼ねなく楽しめる旅のことで、近年は観光庁でも推進されていますが、内部障害者であるオストメイトを対象とした観光ツアーは実施例がありませんでした。
気兼ねなく入浴できるように
参加者のみの脱衣スペースを確保
2019年12月5日の旅行当日、貸切バスに乗り込んだ参加者は40代から80代までの男女16名。ひとり旅の方もいれば、ご家族で参加された方もいました。
龍宮城スパホテル三日月では3時間ほど滞在し、ゆったり温泉入浴と昼食を楽しんでいただきました。ここには男湯・女湯とも、広々としたスペースにさまざまなお風呂があります。脱衣所は男女それぞれ、ツアー参加者だけのスペースを確保しましたので、脱衣時も安心して気兼ねなく温泉入浴が満喫できたようです。
今回の参加者の中には、「ストーマ装具をつけてから、温泉に入るのは初めて」「温泉へ行っても、入るのは部屋についている風呂や家族風呂だけ」「大浴場には人がいないときを見計らって急いで入る」など、これまで温泉入浴を遠慮していた方が多くいました。しかし、今回のツアーで入浴された後は「思っていたより安心して温泉に入れた」「ゆったりできて、本当に気持ちが良かった」と喜びの声が聞かれました。
不安を解消するための講演とストーマ装具の工場見学を実施
ホテルを出発した一行は、次の目的地・アルケア千葉工場へ。到着するとまず、管理栄養士の平野未咲都氏による食事のアドバイスなどの講演と、金沢大学名誉教授で公益社団法人日本オストミー協会の理事でもある山本悦秀氏による旅行体験記の講演が行われました。それぞれ参加者の不安解消のヒントになったようです。
そして普段は公開されていない工場内に入って、ストーマ装具の製造や品質検査の工程を見学。素材を手にして、製造体験ができる時間も設けられました。ツアー参加者同士の情報交換会では生活上の悩みや工夫を共有したり、アルケア社員に日頃の疑問を直接ぶつけていただいたりもしました。
参加者の満足度は高く、ツアー後のアンケートでは約9割の方が外出や旅行・温泉への自信を高められたと回答。旅を楽しむきっかけとしていただけたようです。
(発行:2020年6月)