オストメイトインタビュー

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小久保 兼保 さん

インタビュイーの小久保兼保さんのインタビュー中の様子
インタビュイーの小久保兼保さん夫婦の顔写真

小久保 兼保 さん

45歳のときに、直腸がんを患いストーマを造設。これまで妻の奈美子さんと二人三脚で38年間、ストーマライフを過ごしてこられました。今回は外出や旅行が楽しめるようになるまでの不安や葛藤、日常生活で気をつけていることなどについて語っていただきました。

手術後:悩みの種だったにおいや皮膚のケア

私が手術を受けたのは、1982年12月のことでした。6人部屋に入院していましたが、薬の副作用で味覚と嗅覚が鈍くなり、自分自身の排泄物のにおいもわからず困りました。妻は私に、においについて伝えるべきか悩んだようですが、気づかずにいると私が恥ずかしい思いをするのではないかと考え伝えてくれました。入院中に看護師さんから「においが気になるときのエチケットに良いですよ」とオーデコロンを渡してもらったこともあります。

現在は瞬間消臭剤がありますし、装具自体が改良されて便漏れもほぼなく、においを気にすることはあまりありません。また、当時のパウチは接着力が強く剥がすときに皮膚を傷めやすく、アルコールで剥がすと肌がカサカサになるのも悩みでしたが、現在は良い剥離剤があって本当に助かっています。

退院後:少しずつ行動範囲を広げ1ヵ月後には社会復帰へ

退院後は1週間くらい布団から出られず、ようやく起きられるようになった時期に、娘と一緒に近所の散策から徐々に行動範囲を広げていきました。慣れないうちは歩くだけでお腹に違和感がありました。

最初はわからないことばかりで、普段から聞きたいことをメモしておいて、月1回程度の外来通院時に先生に相談するようにしていました。
職場に復帰したのは、手術から1ヵ月後。上司が満員電車を避けて出勤できるよう配慮してくれましたが、通勤電車のときはどの駅にトイレがあるか把握しても不安で仕方ありませんでした。今ほどストーマについて広く知られていない時代で、なかなか同僚にも言えず、最終的に話したのは上司を含む数名のみです。

私生活においては温泉が好きで、妻や家族とあちこちに行っていますが、手術後は周りの目が気になり入浴する気にはなれませんでした。
手術から7年ほど経ち、日本オストミー協会の研修旅行で千葉県の富津(保田)に行ったとき、「みんなで風呂に入ろう」ということになりました。参加者はオストメイトばかりなので、思い切って入ってみるとすっかり抵抗感がなくなり、気楽に入れるようになりました。
あるとき訪れた温泉地では、お腹に大きな手術跡のある方と出会い、「隠して入るものでもないよ」と堂々とされているのを見て、さらに自信がつきました。

インタビュイーの小久保さんご夫婦の旅行中のバスの前の写真

インタビュイーの小久保さんご夫婦の旅行中の湖の前の写真

インタビュイーの小久保さんが食事を楽しむ様子

術後の生活:健康の秘訣は快眠・快食・快便

私なりの健康の秘訣は「快眠・快食・快便」です。食事は1日3食、朝8時、昼13時、夜19時頃に摂っています。規則正しく食事をすると、胃や身体の調子が良いと感じます。病院に入院中、栄養士さんが料理の講習会を開いてくれ、脂の抜き方や薄味でもおいしい味付けのコツなどを教わりました。それを参考に妻は家庭料理の味をガラッと変えたのですが、家族全員がその味に慣れてくれたので助かりました。

手術前の体重は53~54㎏でしたが、術後は徐々に増えていきました。少し増えすぎですか?と先生に相談したところ、食事量を1割減らすようアドバイスを受け、夕食は主食を抜いておかずだけにしています。
お酒も禁止されていませんが、焼酎を1杯だけにしています。おかげで近年は66~67㎏で安定しています。

運動は2駅手前で降りて歩くことと、朝のラジオ体操を行います。毎日同じことを行うのは大変ですが、目標を設定し、2級ラジオ体操指導士の資格も取得しました。体操の後は、1時間ほどかけて洗腸を行います。この時間は私にとってとても大切な時間で、定期的に出すと体調が整いますし、ストーマもきれいに保てます。

元気の素:パートナーからのサポートも大切

私は何回も妻に救われています。妻は「私も知っておかないと!」と術後10年ほどにわたって講習会などに一緒に参加し、勉強してくれました。装具の名称や置き場所を知っておいてもらうだけでも助かることがあります。
出勤の電車内でうっかり衣類を汚してしまい、会社まで着替えを持ってきてもらったこともあります。

また、私がときどきマイナスのことを言うと、妻は落ち込まずに前向きでいられるよう励ましてくれます。そのように精神的な支えになってくれることも大きいです。

10年ほど前には2回目の開腹手術も受けましたが、もう怖いことはありません。困ったときに助けてくれる伴侶や、相談できる専門家が身近にいることが、私の元気の素です。

(発行:2020年11月)

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