入院生活:ストーマがあっても趣味は楽しめる
私は小柄ではありましたが、子供の頃から身体を動かすことが大好きで、様々なスポーツを楽しんできました。特に高校から始めたバドミントンは、大学卒業後も社会人クラブで30歳過ぎまでプレーを続けました。社会人になってからは当時ブームだったスキーとゴルフを始め、一時はスキーに年10回、ゴルフは年20回コースに出るほど熱中していました。40代50代を経て、回数は減ったものの趣味として長く楽しんできました。
病気がわかったときは、不安だらけでした。私の場合、治療開始後すぐ腸閉塞を防ぐためS状結腸にストーマを造設しました。それから約4ヶ月後に腫瘍を切除する手術を受けた際に、 尿路ストーマを造設しました。そのため、S状結腸ストーマを閉鎖するまでの約10か月間はWストーマでした。入院していた病院にはストーマ外来があり、食事や入浴などの日常生活について適切な助言をもらえたことが良かったです。運動についても、主治医の先生や看護師さんから「ストーマがあっても、以前とそれほど変わらずできますよ」と聞いていました。栄養状態を回復させるため、入院期間が約120日間と長くなりましたが、その結果、たくさんの情報を得ることができました。入院中にストーマにも慣れ、日常生活にそれほど不便がないと実感できたことも後押しになったと思います。
実際、8月に退院すると9月には仕事に復帰し、10月には国内旅行、11月には海外旅行と少しずつ趣味を再開。仕事も時短勤務から通常勤務に戻すなど、段階的に日常生活が行えるようになり、体力的にも自信がついたことで「これならスポーツもできるかな」と再開がイメージできるようになりました。
そこで、スキーはまず年明けに日帰りで行き、次は泊りがけで、段階を踏み再開しました。
とにかくできそうなことからクリアしていくと、次第に必要なものや工夫の仕方もわかってきました。春には大抵のことはできると思えるようになり、夏にはゴルフを再開しました。
再開の準備:スキーやゴルフを再開するにあたって
基本的に腹筋をあまり使えないため、筋力自体は以前より落ちています。プレーに支障がないか気になっていましたが、実際にやってみるとそれほど心配することはありませんでした。装具の固定については、パウチカバーの上に腹巻をして、さらに通常は3分丈のスパッツを履いています。そうするとパウチが固定され、多少走ったくらいでは動きも問題ありません。また、スパッツは適度に伸縮し、重さも吸収してくれる優れものです。
スポーツを再開するにあたり、いくつか工夫したことがあります。スキーウェアについては、ベルトの位置がストーマに当たってお腹を締め付けないようにということで、パンツだけワンサイズかツーサイズ上のものに買い換えました。着心地やサイズ感はデザインやメーカーによっても違うので、やはり試着が大事です。
ゴルフについては、同伴者と一緒に回るため、スキーよりハードルが高く感じました。1つはトイレに行けるタイミングと場所が限られることです。それでも9ホールを2時間から2時間半で回る間にトイレが1カ所はあるので、必ず行くようにすれば問題ないことがわかりました。もう1つは、スキーが更衣室でウェアを着替えるだけであるのに対し、ゴルフはプレー後に入浴することが一般的なことです。そんなとき私は、パウチはトイレで折りたたんでサージカルテープで留め、温泉用などで売っている腰に巻くタオルを使用しました。「手術跡があるので」と言えば、周りもそれほど気にしません。
メッセージ:身近な運動やスポーツにチャレンジしてほしい
私はアウトドアスポーツを通して、外に出て身体を動かすことの楽しさ、気持ち良さを満喫しています。スキーやゴルフの再開と同時に、しばらく乗っていなかった自転車を通勤に利用できるようになり、体力と足腰の回復を実感できました。
入院中も、退院したらやりたいことを周りの人に話していたことから、病院では「その前向きさが免疫力を高めるんだね」と言われました。今は通勤や散歩の道すがらに景色を見ながら「キレイだなぁ」「気持ちいい!」など小さなことにも楽しみを見つけています。
ストーマを持つようになっても、ちょっとした工夫でだいたい解決できるので、それまでできていたことで、できないことはほとんどありません。新しいことにチャレンジすることもできますから、身近な運動や好きなスポーツをぜひやってみてほしいです。さらに旅行をしたり、食べ歩きをしたり、あるいは仕事をしたり、ストーマを造設する前と変わらず人生を楽しめることを知ってほしいと思います。
(発行:2022年3月)