オストメイトインタビュー

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中村 大介 さん(40代男性 ストーマ歴2年)

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中村 大介 さん

イレオストミー歴2年の中村さんは、潰瘍性大腸炎の悩みを抱えるなかで大腸がんが発覚し、ストーマを造設。不安も大きかったそうですが、手術前から積極的に行動を起こし、今は自分に合った装具や生活スタイルを見つけ、以前と大きく変わらない生活を送っているそうです。

手術の前後:オストメイトの先輩方に励まされ希望の光を見つけることができた

大腸がんと診断され、ストーマ造設の手術を受けたのは2021年3月です。担当医師から説明を受けた際、排便だけでなく排尿のコントロールにも影響する可能性や、勃起障害が残る可能性があると伝えられ、とても不安になりました。手術前後はよく眠れず、病院内のメンタルケアチームにもサポートをお願いし、話を聞いてもらいました。現実逃避だったかもしれませんが、「寝て起きたら現実が変わっているのではないか」「がんというのは間違いだったと言われるのではないか」「神社にお詣りしたら治るかもしれない」などと考えることもありました。

僕は手術前から、さまざまなメーカーからストーマ装具のパンフレットを取り寄せたり、SNSのコミュニティに入ったりして情報収集をしていました。ネット上ではネガティブな投稿が目立ちましたが、希望の光を見つけたと感じたのは日本オストミー協会の方たちとの交流でした。会員の方々と話してみると、好きなものを食べて、スポーツもしていて以前と変わらない毎日を送り、人生を楽しまれているようでした。「腹巻きして隠せば性行為もできるよ」と笑いながら言ってくれたことにも励まされましたね。1人でネットを見て不安に押しつぶされそうだったのが、ストーマに慣れれば普通に生活できるんだと思えたことは大きかったです。実際に日々の生活が普通にできるようになるまでは1年半くらいかかりましたが、障害の有無に関係なく人は誰でも悩みを抱えていると思うので、今はストーマもその1つとして受け入れられるようになりました。

手術の前後は、近所に住む両親にも助けられました。心配で眠れないと言う父と、すぐに現実を受け入れ平然と応じてくれた母とが対照的でしたね。両親に自分ががんであると伝えるのは辛かったですが、無事に回復した今は一緒に食事をすることもでき、安心してもらえています。

仕事と日常生活:退院後2カ月で料理人に復帰 自分に合う装具探しが重要

僕は20代の頃から料理人を志し、中国料理店で仕事をしています。大きな中華鍋を振るには体力も必要ですし、カウンター越しに料理を提供するのでにおいの心配もあり、ストーマを造設すると好きな仕事が続けられなくなるのではないかという不安もありましたが、退院2ヵ月後には仕事に復帰することができました。

職場の人たちにも自分の病気やストーマのことを話し、理解してもらっています。装具がしっかり貼りついていればにおいの心配もないことがわかりましたし、体力も次第に回復して今では手術前と同じように仕事ができています。振り返ってみると、がんになる前から潰瘍性大腸炎で腹痛や排便のコントロールに悩まされていたので、ストーマ造設後のほうが快適に過ごせています。

また、自分に合う装具を使うことも重要だと感じています。僕の場合は手術をした病院のストーマ外来で、普段どんな生活をしていて何を望んでいるかを伝えて、自分に合いそうな装具を提案してもらいました。提案してもらった装具はすべて試し、サイズ感や排出口の使用感が自分に合っていると感じた装具を現在も使っています。ストーマケアがうまくできずに苦労されている方は、もしかしたら自分に合った装具にまだ出会えていないのかもしれません。

インタビュイーの中村大介さん

メッセージ:食事や運動、ファッションなどもちょっとした工夫で楽しめる

最近は自分のなかでパターンができてきて、特に困り事はないですね。手術前はストーマがあると日常生活がかなり制限され、楽しみが奪われるのではないかと思っていましたが、やれないことは意外に少なく、少しずつ解消できてきています。食べることが好きで外食をすることも多いですが、こんにゃくやきのこ類を避けるかよく噛んで食べるくらいで、食べたいものを食べ、ビールや炭酸飲料も飲んでいます。ストーマから出る音は自分でコントロールできないので人と食事をすることが怖かったですが、僕の場合は、朝一や空腹時に何か食べると音が出やすいとわかってきたので、職場で食事をするときはスマートフォンで音楽をかけたりしています。静かな場所での会食のときも、自分が思うほど人は気にしないと割り切るようになりました。

服装についても、ネットの情報を見てこれまでどおりのファッションができなくなると思って落ち込み、当初はオーバーオールばかり着ていました。しかし、実際に手術前に着ていたパンツをはいてベルトをしてみると意外に目立たず、以前気に入っていた服も着ることができています。黒いパウチカバーをしていますが、カバーがずれて見えてしまったら嫌なので、黒色のパウチがあるとうれしいですね。

以前はストーマを造設したら、いろいろなことができなくなると思い込んでいました。でも僕は今、毎日入浴して、スポーツクラブにも行き、バイクにも乗っています。できないことはあまりなく、ちょっとした工夫で解決できることも多いです。

病気にはならないほうが良いですが、なってしまったら仕方がありません。ストーマは病気と闘って勝った証なので、「日本で一番元気な障害3級者になってやろう」と思っています。ネット上のネガティブな情報を鵜呑みにせず誰かに相談すること、いろいろな装具を試したり、やってみたいことがあれば前向きにチャレンジしたりすることが大事だと思います。

インタビュイーの中村大介さん

(発行:2023年9月)

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