オストメイトインタビュー

公開日:

嶋川 篤子 さん(80代女性 ストーマ歴4年)

インタビュイーの嶋川 篤子 さん

嶋川 篤子 さん(80代女性 ストーマ歴4年)

保険会社の営業職として勤続44年の嶋川さん。4年前にコロストミーを造設しました。周囲からのたくさんの応援や励ましに支えられて治療を乗り越え、仕事に復帰されました。そんな嶋川さんに仕事を続けるうえで大切にしていることや生活での工夫について伺いました。

診断と治療:母の言葉に支えられて 仕事を続ける中で突然の病に

私は23歳のときにお見合いでパン屋を営む主人と出会い、この町に来ました。しばらく仕事は順調でしたが、37歳のときに会社が倒産して困っていたところ、「勉強しながら仕事を覚えられるから、やってみんかね」と誘ってもらったのが保険会社の営業職の仕事でした。

何も知らないところから、3日だけやってみようと思って始めたのですが、慣れてくると仕事が楽しくなり、1年やってみよう、もう1年頑張ってみようと続けるうちに44年が経ちました。私の主な仕事は保険の契約の募集で、仕事を通してたくさんのお客様と出会うことができました。会社に表彰していただいたこともありますが、それも皆さんに助けられたおかげです。「仕事は辞めたらダメよ。一生、仕事はしなさい。」というのが母の遺言でしたが、この言葉のおかげで仕事を続けられたように思います。

長い間忙しい日々を過ごしていましたが、6年ほど前、急に動けなくなってしまったのです。検査を受けたところ、脊椎が3カ所も折れていて腰椎圧迫骨折と診断されました。注射などの治療で歩けるようになりましたが、今度はお腹の調子がすぐれないことが続き、救急車で運ばれた病院でS状結腸がんによる穿孔性腹膜炎と告げられました。すぐに8時間に及ぶ手術が始まり、目が覚めたらストーマが造設されていました。手術後、回診にきた先生のお話で、救急搬送されたときは危険な状態だったことを知りました。私の父は48歳のときにがんで亡くなり、私の兄弟も6人のうち4人ががんに罹っていましたが、自分ががんになるとは思っておらずショックでした。

造設されたストーマはまるで自分のものではないように感じましたが、看護師さんにケアの方法を教えてもらいながら、少しずつストーマに慣れていくことができました。

仕事と生きがい:6カ月の入院を乗り越え多くの人に励まされて仕事に復帰

手術後は治療やリハビリもあって約6カ月入院しました。その間もたくさんの人が電話をかけてきてくれたり、お見舞いに来てくれて、ありがたかったです。もちろん、大変なこともたくさんありました。入院中は体重が変化したことでストーマ装具が合わなくなり、面板の穴の大きさを調整したり、いろいろな装具を試しました。排泄物が漏れることもあり、以前のように仕事ができるか自信がなくなることもありましたが、夫や友人たちの励ましや、「次はいつ来てくれるの?」といったお客様からの応援に支えられ、仕事復帰への思いが高まっていきました。

仕事には、退院して間もなく復帰しました。職場ではオストメイトであることを伝えており、お客様にも自分の病気やストーマの経験をお伝えするようにしています。私が頑張っている姿を見て、「励まされました」と言葉をいただくこともありますし、今は周りの方たちにお世話になった分を皆さんにお返ししていきたいと思っています。

生活の工夫:さまざまな工夫と生活リズムを大切に

外出するときは、ストーマ装具一式(写真参照)を巾着袋にひとまとめにして、リュックに入れて持ち歩いています。一度、レストランでお客様と対面中に排泄物が漏れてしまったときは慌てましたが、ストーマ装具一式を持ち歩いていたおかげでレストラン内のトイレで対処することができました。また、静かな場面でガスの音が出たこともあります。そこで、音の対策として、お腹に手ぬぐいを当てるようにしています。また、においの対策としては、ストーマ袋の中に潤滑消臭剤を入れるようにしています。

嶋川さんが外出時に持ち歩いている装具一式嶋川さんの装具一式(ストーマ装具、ゴミ袋、ガーゼ等)

嶋川さんが装具一式を入れているリュックリュックのポケットに入れています

以前は忙しかったこともあり、食事を適当に済ませることもありました。空いた時間にコンビニのおにぎりなどを食べて、帰ったらバタンと寝るような生活をしていました。病気をしてからは、お世話になった先生方に「食事は大事ですよ」と言われたのをきっかけに、朝8時、昼12時、夕方6時と1日3食のリズムを整えるようにしました。いつも野菜が摂れるように煮物を作り置きして、食後には免疫力を上げるといわれている黒ニンニクを食べています。また、夜8時には寝床に入り、朝は5時半に起きています。よく寝ること、それが健康の秘訣でしょうか。

また、裁縫が得意なので服をリメイクして活用しています。オストメイトの方にご紹介したいのは、下着に紐をつけることです。トイレで排泄物を処理する際、服の裾をまとめることができます(イラスト参照)。

嶋川さんの衣服の工夫

これからの目標:何事も楽しみながら夢と希望を持って前向きに

これまで仕事優先で、趣味といえるようなことをあまりしてきませんでした。今は人生100年といわれている時代ですから、新しいことにも挑戦したいと思っています。『向日葵』のインタビューは何度も読み返して、他の方々の体験談からいつも元気をいただいています。私にはオストメイト同士の横のつながりがないので、今後は患者会にも参加してみたいです。いろいろな情報がほしいので、オストメイト同士で役立つ情報が共有できるとありがたいですね。

傾聴ボランティアもやってみたいと思っています。町が開催している養成講座があるので勉強して資格をとるつもりです。他にも、俳句や詩吟、ピアニカもやってみたいですし、何でも挑戦してみることは大切だと思っています。

過ぎてしまった過去を変えるのは無理ですから、後ろは振り向かないようにしています。夢と希望をもって前向きに「よし、ええことをやるぞ」「人が喜んでくれることを探すぞ」というのが、私が大切にしている考え方です。

(発行2023年3月)

問い合わせをする

どんな些細なことでも構いません。
お気軽にお問い合わせください。

※医師の診断を要するような健康相談・治療内容に関するお問い合わせにはお応えいたしかねます
かかりつけ医にご相談ください。

お客様相談室

お電話で
フリーダイヤル 0120-770-175
午前9:00〜午後5:30 (土・日・祝日を除く)